上の階に上がると、光が多く入る所為か陰湿な空気は感じられない。
しかし、今にも崩れそうなのは変わりない。

横長のホテルにありがちな、同じパターンの客室が続く。
窓からの眺めは……
遊歩道が見えるだけ。
かろうじて、遠くの海がチラっと見える程度だ。
お世辞にも景色がいいとは言えない。
浴室。
天然のジャングル風呂。
柱や壁、床はもちろん、そこが風呂だったという事を忘れさせる。
浴槽には雨水が溜まり、中に何か泳いでいても不思議じゃない。
廃墟を多く見てきたが、こうした雰囲気の風呂は初めてかもしれない。
温泉宿、温泉があるからと言ってどこでも繁盛するということはもちろんない。
温泉を含めた色々な要素があってこそ、生き残れる宿がある。
廃墟を見ていると、「廃」になった理由にはいくつかの共通点があり、その理由もわかる時がある。
逆に、「廃」にならない理由もわかる気がしてくる。
廃墟を様々な角度で見ると、色々なものが見えてくる。目の前にある「廃」以外にも、広くは日本の現状や過去の状況。産業やもっと深い歴史。美としての廃墟、オカルト人が思う廃墟の見方、社会情勢、当時の人の想い、怖い要素だけでなく、美しい要素だけではなく、それ以外にもたくさんの「気づき」を見出す事ができる。最近になって、ようやく廃墟の本当の楽しみ方や見方をわかってきた気がする。
TOP